γ×ユニ : 神崎まりあ
2011.10.10 RM5発行。ユニお帰りなさいな無料配布本
Believe in you
一歩一歩彼に近づく毎に、胸の鼓動が早くなる。
これは現実なのだと、何度自分に言い聞かせたことだろう。
どれだけこの日を待ち焦がれただろう。
足の震えが止まらない。ユニは震える足を励ますように、そっと拳を握りしめた。
目の前の彼――ガンマが、とても驚いた顔をしているのを見て、ユニはほっと胸を撫で下ろした。
ずっと会いたかった。でも、それはユニの一方通行の想いでしかないかもしれない。
未来――十年後の記憶はあるけれど、それは今の自分たちが過ごした日々ではなく。そしてあの未来は、今はもう失われてしまった刻だから。たとえこのまま歳月を重ねても、もうあの刻には重ならない。
目の前に、ずっと昔から知っているのに、この時代ではまだ会ったことのない最愛の人がいる。
ユニの記憶にあるよりも、まだ若いガンマの姿に、胸が騒ぐ。
それはまるで、失ってしまったはずの未来を、やり直すチャンスを与えられたかのように。
「姫……」
ガンマの姿を見た途端、胸がぎゅっと苦しくなった。駆け寄って飛びつきたい気持ちを押さえることが、こんなに大変なことだと思わなかった。
まだ、私のことを姫と呼んでくれる。ただそれだけで、胸が熱くなる。
「……γ」
声に出して呼んだだけなのに、胸が苦しくて息が出来なくなった。
心の中では何度も呼んでいた。今ようやく、本人を前にして呼ぶことが出来た愛しい名前。
迷うことなくユニの側に駆け寄り、膝を折ってくれたガンマの姿に、もう胸がはち切れそうだった。
「姫」と、この時代でも自分をそう呼んでくれる。
そして、何よりもそれを、私が喜んでいる!
溢れそうになる涙を堪えるのが大変だった。
この場に居たのが二人きりだったとしたら、間違いなく彼の腕の中で泣いていたに違いない。
二人っきりになると、ユニはガンマの手を取って歩き出した。
困った様子が繋いだ手から伝わってきて、ユニはくすぐったい気分だった。
「……姫」
ガンマの戸惑った声には気がついていたが、ユニは聞こえない振りをする。
強引に繋いだ手を、今はまだ離したくないから。
そしてガンマも、困った様子は隠さないけれど、その手を振り払ったりはしない。
未来の記憶よりも、優しい手。どうしたらいいか、迷っている。
ユニの知っている手は、もっと強引にユニを守る逞しい物だった。
でも、今のユニにはそれが何よりも嬉しい。
この手はきっと、あの頃よりユニに近い。そう信じて、ユニは繋いだ手をぎゅっと握る。
もう、遠回りはしたくないから。未来の中で自分が取った行動を後悔はしていないが、やり直せるチャンスを貰った今は、もう遠慮なんかしていられない。
「やっと、会えました」
かわりに違うことを口にすると、繋いでいた手に少しだけ力が入り、慌てたように直ぐに力が抜かれた。
そんな仕草にさえ、胸が熱くなる。
現実には、初めて会ったばかりの私を、ちゃんと受け止めてくれている。ずっと感じていた不安など、一気に吹き飛ばしてくれた。
「……γ。また会えた」
安堵のため息と一緒に、言葉が漏れた。
「姫」
「きゃっ」
ガンマの声が聞こえたその途端、繋いだ手ごと、ユニの身体は後ろに引き寄せられた。
「ああ、また会えた」
気がつくと、ユニはガンマに抱きしめられていた。
「γ……本当に。これは、夢じゃないんですね」
触れ合っている部分から、ガンマの体温を感じ、そして抱きしめられている力強さに、ユニはどれだけこの腕を待ち焦がれていたかを知った。
記憶だけじゃない、本当の温もり。ガンマの匂い。
「ずっと、会いたかった」
抱きしめられる以上の力で、ユニはガンマに抱きついた。
「遅くなってすまない」
その言葉に、ユニは勢いよく首を振った。
ガンマがユニの事をずっと探してくれていた事は知っている。時が来るまで再会を引き延ばしたのはユニの側の問題だったのだ。
「……γ」
ユニの震える声に気がついたのか、溢れ出した涙を隠すように、ガンマの手がユニの頭を肩口に引き寄せた。
「言えないことは言わなくていい」
それは自分を信頼してくれている証。
「オレは、今も未来も、姫のもんだ」
ガンマはそう言うと、ユニの手を恭しく取り、優しく口づけした。
「はい……」
もう離れない。この手を離したりはしない。
「もう、離さない」
「γ……ありがとう」
自分と同じ気持ちでいてくれる事が、今のユニに取ってなによりも嬉しかった。
Grazie
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